坂の上クリニック症例集ー尋常性疣贅
尋常性疣贅(いぼ)
 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)は簡単にいえば「いぼ」のことです。それにしても、疣贅って難しい漢字ですよね、書けといわれても、私にはとうてい書けません。疣贅の前につく「尋常性」もへんてこな語感の言葉です。これ、皮膚科で使われる医学用語で、意味は原因不明ということなのです。内科では「特発性」ともいいますね。
 さて、尋常性疣贅です。子供の頃、よく手や足に、しつこい角化したいぼが出た記憶はありませんか?名前は難しいのですが、尋常性疣贅とはまさしくそのいぼのことです。尋常性といいながら、実は今や原因がわかっています。HPV(Human Papilloma Virus)の感染が原因なのです。え、また横文字で難しくなってきたって?御心配なく。分かり易く説明します。HPVはウイルスのひとつです。ウイルスは細菌より小さい、おもにDNAやRNAなど遺伝子と少しの蛋白質からなる最小の生き物のひとつです。(細菌になると壁に囲まれたりしていて、もう少し大きく複雑な構造をしています。)ウイルス感染による病気には、風邪や肝炎、AIDS、ヘルペスなど実にたくさんあります。HPVもそうしたウイルスのひとつで、100種類くらいあり、中には子宮頚癌を起こす型もあり、人には影響の大きいウイルスです。けっこう難しい?困ったね。まぁ、わからないところは本を読んでください(あはは)。
 いぼの説明が長くなってしまっていますが、最後に治療方について。これがなすのへたからレーザー治療まで色々なのです。一般に皮膚科では外科的切除や凍結療法、レーザー治療など、物理的にやっつけてしまう治療方法が確実な方法とされているでしょうか。ここで紹介するのは、いぼの漢方治療です。長い前置きでした。

 6才の女の子が足の裏にできたいぼのことで見えました。診ると直径5-6mmの尋常性疣贅のようです。皮膚科では痛いことをするので、とにかく痛いことなしの治療を希望しているとのことでした。下が初診時の足底部のいぼの様子です
いぼー初診時
 いぼの漢方治療といえば、まずヨクイニン。K社のヨクイニンを1日3錠処方しました。2週間後にはいぼの一部分がとれたと報告してくれました。幸先のよい出だしでしたので、処方はそのままに継続していきました。
 きちんと服用してくれているようでしたが、その後あまり変化がありません。そこで2ヵ月たった頃から桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)を追加しました。1ヵ月ほど経つと、いぼが平らになってきました。
いぼー3ヶ月後
 そこで、最後の仕上げとして紫雲膏(しうんこう)を塗るよう追加。だいぶ薄くなってきました。
いぼー6ヶ月後
 紫雲膏追加から2月半ほどたったある日、予約日でもないのに「いぼがとれた!」と、わざわざ報告にきてくれました。きれいにいぼがとれていました。
いぼー廃薬時
 この症例の場合、いぼがとれるまで都合7ヵ月半経過していました。なんといってもえらいのは、小さいのに漢方薬をよく飲んでくれたお子さんと、根気よく薬を飲ませたお母さんです。本当に頭が下がります。ヨクイノインの量は今考えるともう少し多くてもよかったかもしれません。