大柴胡湯の加味方が奏効した尋常性乾癬(その2:秋季の増悪)
  患者は51歳、男性。約9年前(1992年)頃から膝の所に皮疹が出現し、近くの皮膚科や大学病院皮膚科を受診して加療したが、一時的に軽快することはあっても、結局、改善しないため知人の紹介により当院に5月頃来院した。
 身長167cm、体重91kg、脈はやや沈・小・弱、腹部は腹力十分で、胸脇苦満は著明、両腹直筋の攣急も中等度、圧痛点なし。初診時の皮膚所見としては乾湿中等度で、全身に発疹を認められ、かゆみも中等度にある。甘い物や果物は大好きであり、餅米類はそれほど食べないし、酒もそれほど飲まないが、肉類は好きで、時に食べるとのことであった。全体像から判断し、基本薬方としては、大柴胡湯を選定し、全般的な潮紅の皮疹に対して、黄連、黄柏、山梔子を加味して処方した。2週間後は、皮疹は赤味がややうすくなってきた感じであり、かゆみは軽くなったとのこと。同じ薬方を継続していったところ、約6週間後は塗り薬も含めて西洋薬は全く使用していないのに、皮疹の潮紅と厚さが大変に減少し、改善傾向が著明だった。初診より10週間後(7月)に来院した時には、皮疹はますます改善されてきていたので、患者は大いに驚き、喜んでいましたが、いつも秋頃になると増悪するので、そのことを心配していました。その後も改善傾向で経過し、初診から20週間後(9月)に来院したときには、身体の大部分の皮疹は完治に近い状態で、下腿の一部のみに皮疹が少し残っているような状態でした。しかし、10月に来院したときには、皮疹が特に下腿のあたりのみで増悪していました。便通もよく、甘いものやお酒の摂取はしていないとのことでしたが、秋に関係のある食べ物は何かと考えていき、栗、梨、柿などの果物を多食していないかと聞いてみましたら、栗が大好物であり、かなり多食していたとのこと。この際、栗を食べないようにして様子をみていってはどうかと言ってみたところ、栗をやめると楽しみがなくなってしまうので、大変に不満のようでした。その後、患者は来院されてません。来院されない理由も色々あることでしょうが、本患者がこの難治疾患を本当に治したいという気になって、再び来院してくれるなら十分に治り得る疾患であるだけに、なんとも残念な気がします。しかし来院しないでも済ませられる程度のことなら、それもまた略治の段階と考えられます。

右大腿部側面
右下肢(下背部)
右下肢(膝部)
腹 部
背 部
初診時

(2001.05.02)

4ヶ月後

(2001.09.17)

5ヶ月後

(2001.10.18)

次項