地図状舌
地図状舌も聞きなれない病名だと思われます。舌の表面に赤い斑状の模様を生じる病気です。痛みや違和感を感ずる事はありますが、普通は無症状で治療の対象にはなりません。小さな子供や若い女性に多い病気です。原因は不明で、定まった治療法もありません。
高校生の女性が舌の痛みと模様があるとのことで来院しました。見ると典型的な地図状舌です。
初診時
地図状舌の治療経験はありませんが、舌も消化器の末端であることから、胃炎などによく使われる半夏瀉心湯を投与しました。1週間後に来院していうには、薬を服用して2,3日後には痛みもなくなり、模様も見えなくなったとのことでした。効果発現の速さには患者さんはもちろん主治医も驚いた次第でした。
1週間後
同じ薬を継続していましたが、また少し模様が現れることもありました。もともと移動・消長のある病気です。
3週間後
その後、苦い粉薬を飲むのが苦痛になってきたとのことなので、カプセル剤があり半夏瀉心湯と同じく黄連を含む黄連解毒湯に変え現在(初診より3ヶ月経過)に至っていますが、模様はおおよそなくなっています。
3ヶ月後
地図状舌は普通治療の対象にはならないといわれていますが、この症例の場合は痛みがあり、また舌表面の模様も気になるようでしたので治療を行いました。西洋医学的には地図状舌の決まった治療方はありませんし、漢方でもあまり聞いたことがありません。この症例では半夏瀉心湯と黄連解毒湯がよく効きました。効果が出てくるまでわずか数日しかかからなかったのには驚かされますが、「漢方は時間がかかる」との常識に反し、漢方も効く時は意外に速く効くものです。
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