患者は22歳、女性。17歳の頃から、尋常性坐瘡(にきび)が出始め、皮膚科で抗生物質を処方されていたが、昨年の夏抗生物質を止めたところ、顔と胸部、背部の湿疹が悪化した。某薬局で加味逍遙散の煎薬を処方され、2ヶ月間服用しその後桂苓丸料を合方してもらったがあまり効果はなかった。1993年3月24日、きちんと診察して薬を出してもらいたいと思い、当院に来院した。
痩せ気味(155cm、45kg)、色白である。便通は1日1〜2行。腹侯は腹力やや軟、腹直筋は軽度に攣急している。その他特別の所見はない。脈はやや沈・小・弱で、血圧106/58mmHgであった。生理は順調だが、生理痛が強い。顔面、胸部、背部に赤色丘疹が多数見られた。
全体像から判断してやや虚証の傾向であり、桂枝茯苓丸料ではなく桂枝湯に茯苓・桃仁・牡丹皮を各3g入れて、いわばやや虚証向きの桂枝茯苓丸料にヨクイニンを16g入れた薬方を処方した。
にきびは徐々に改善していき、皮疹の数も発赤の程度も減少した。しかし、まだ皮疹が認められるので同一薬方にて様子を見ていった。
初診より約1年がたった頃、増悪が見られた。聞くと便通が悪くなっているとのこであったので、同一処方に大黄を2g追加して便通の改善を図ると皮疹も再び軽快したいった。
都合2年近く来院して本人も来院しなくなった。1999年3月(初診より約4年7ヶ月後)電話でその後の状態を問い合わせてみると肌の状態はよく、もう結婚している、とのことであった。