患者は30歳、女性。11歳の頃から尋常性坐瘡(にきび)が出始め、13歳位から某大学病院の皮膚科、某有名市立病院の皮膚科を受診したが、ステロイドの塗り薬を処方されるだけで、根本的には改善しなかった。1996年の9月からは某漢方薬局から煎じ薬を処方してもらい、約1年間服用したが余り効いた感じもせず、母親に教えられて、1997年8月5日、当院に来院した。
身長は中等度でやや痩せ形である(159cm、48kg)。便通は1日に1行、立ちくらみがしやすく、手足が冷えやすい。生理は28日〜40日と不順で生理痛が強い。脈はやや沈・小・弱で、血圧102/62mmHg、舌は湿潤して薄い白苔がある。腹侯は腹力軟、臍上悸があり、胸脇苦満が軽度にあり、両腹直筋の攣急も軽度にある。臍傍の圧痛点はなく、その他特別の所見はない。皮疹は顔面にほぼ粟粒大までの丘疹があった。
全体像から判断してやや虚証であり、立ちくらみ、手足の冷え、生理不順や生理痛などがあり基本薬方としては当帰芍薬散料を処方した。
漢方薬服用後3ヶ月後にはほぼ完治の状態にまで改善したが、その後状況に応じてヨクイニンや黄連、さらに便通の悪いときには大黄も併用した。生理は遅れ気味ではあるが生理痛は消失した。症状の消長はあるが漢方薬を約3年8ヶ月間服用しておおよそ完治した。当帰芍薬散料単独でもかなり治りうることは特筆すべきことと思われた。