患者は24歳、女性。小さい時からアレルギー性鼻炎があった。約3年前から全身が痒くなり、肘窩と膝窩に皮疹が出て、近医でアトピー性皮膚炎として加療された。1992年(平成4年)に左下腿に発疹が出た。8月に某皮膚科を受診し貨幣状湿疹として治療されたが、なかなか改善しないので、知人に紹介されて、1994年(平成6年)1月13日当院に受診した。
身長はやや高く、体重は中等度(167cm, 58kg)。便通は2〜3日に1行、排尿回数は日中7回、夜間尿はなし。口渇は軽度、汗はかきやすい。目眩や立ちくらみはない、手足の冷えは軽度にある。生理は順調で生理痛は軽度にある。
脈はやや沈・中・弱で、血圧106/60mmHg、舌は湿潤して微白苔がある。腹侯は腹力中等度、両腹直筋の攣急は中等度にあり、臍の左やや下方に軽度の圧痛点がある。胸脇苦満やその他の所見はない。
皮膚はやや白く両肘窩と左背部と左下腿後面に皮疹が認められる。すなわち両肘窩のアトピー性皮膚炎の皮疹と、下腿部の慢性湿疹の皮疹が混在した状態であった。
検査所見ではIgE(735)、好酸球性白血球(10%)、RASTではハウスダスト(5+)、スギ(3+)、ブタクサ(2+)、ネコノフケ(2+)、その他(0)となっている。
全体像から判断してやや実証であり、まずアトピー性皮膚炎の皮疹を改善するため、基本薬方としては白虎加人参湯を処方した。
2週間後にはアトピー性皮膚炎の皮疹も慢性湿疹の皮疹もかなり改善した。1ヶ月2週間後にはアトピー性皮膚炎の方はほぼ完治したが、湿疹は根治にまでは至っていなかった。しかし同一薬方を続けたところ8ヶ月後には下腿部の湿疹も色素沈着を残すのみとなり廃薬した。
その後患者は来院してないが、電話で確認すると、2001年(平成13年)10月の時点でも良い状態であるそうである。