患者は60歳、男性。約4年前から高血圧で降圧剤を服用してきたが、約1年前(平成12年)の5月頃から足の裏に皮疹が出現し、その後、手にも出るようになった。某総合病院の皮膚科を受診し、降圧剤の副作用ということで、服用を中止することになったが、皮疹は軽快しなかった。その後、何軒かの皮膚科を受診するも軽快せず、インターネットを見て、平成13年2月ごろ当院に来院した。
身長177cm、体重112.5kg、血圧200/128、脈はやや浮・中・力あり、腹候は腹力十分で、胸脇苦満は中等度、両腹直筋の攣急も中等度、臍傍の圧痛点なし。初診時の皮膚所見としては皮膚は湿潤して、全身に発疹が認められた。特に、足の裏の皮疹が重篤で、疼痛のため歩行困難であり、車椅子に乗って診察室に来たような状態であった。足の裏と背とその周囲および手掌の部分の皮疹は掌蹠膿疱症の皮疹の典型例であったが、それ以外の場所の皮疹は尋常性乾癬の皮疹に似ていた(写真参照)。甘い物や餅米類の摂取は少ないが、肉および魚は食べ、酒も飲むとのことであった。全体像から判断し、基本薬方としては、大柴胡湯を選定し、掌蹠膿疱症の改善に大切な桂枝加黄耆湯を加味する意味で、桂枝3g、甘草1g、黄耆14gを加味して全体の2分の1量を1日分として14日分を処方した。初診時より2週間後は、皮疹は全体的に良くなってきた印象であり、掻痒感も軽快を認めていた。同じ薬方を継続していったところ、6週間後、10週間後、14週間後も皮疹の状態は改善傾向で経過し、血圧の状態も落ち着いてきた。初診時より22週間(約5ヶ月)後(体重105kg、血圧164/82)はかなり改善を認め(写真参照)、38週間(約9ヶ月)後の皮疹の状態はほとんど完治に近い状態になった(写真参照)。このとき、同じ薬方を14日分処方したのみで、その後来院されてないが、初診時より1年後(平成14年)に電話で尋ねたところ、皮膚はきれいになっていて、元気に仕事をしているとのことだった。